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不妊症の治療法
11. 胚盤胞移植法(BT)
- 胚盤胞(Blastcyst)とは?
受精した胚は2日目には通常4細胞、3日目には7〜8細胞に細胞分裂(卵割)します。
通常体外受精にはこの時期すなわち採卵後2日目ないし3日目に胚移植を行います。3日目の胚をさらに2日あるいは3日間培養を延長すると胚は下の図1に示すように外側の細胞(外細胞層TE)と内側の細胞塊(内細胞塊 ICM)とにわかれます。この状態の胚を胚盤胞(Blastcyst)とよびます。
- 胚盤胞移植法(Blastcyst Transfer :BT)とは?
通常、胚移植は採卵後2日目、あるいは3日目に子宮にもどします(胚移植)が、5日目まで培養を延長し胚盤胞まで育てて、これを子宮にもどす方法が胚盤胞移植(BT)です。移植の方法は胚移植法と全く同じ方法です。
- なぜ胚盤胞移植(BT)が行われるか?
5日目の胚盤胞移植(BT)の利点を説明する前に自然の妊娠の過程について簡単に説明します。卵巣から排卵された卵は直ちに卵管の先端(卵管采)から吸収されて卵管の中に入ります。そして卵管の中で精子と出会い受精がおこります。(図2-(1))受精した卵(胚)は卵管の中で細胞分裂(卵割)をおこしながら(2細胞→4細胞→8細胞→桑実胚)卵管の中を子宮に向かって移動します(図2-(2))。そして5日目には胚盤胞となって子宮腔内に到達します(図2-(3))。そして子宮内で1〜2日間過ごしてから子宮内膜に接着(着床)してはじめて妊娠が成立します(図2-(4))。
このように自然の妊娠では5日目の胚盤胞の段階で子宮に到達します。子宮内膜は5日目頃には胚を受け入れ(着床)やすい状態が整っています。つまり着床の環境がととのった状態で胚が入ってくるわけです。このような自然妊娠に近い状態つまり、採卵後5日まで胚を培養し、内膜の着床環境が整備された時期に胚を子宮に移植する方法が胚盤移植法(BT)です。
- なぜ胚盤胞移植(BT)は胚移植(ET)より着床率が高いのか?
排卵後2日あるいは3日目に胚移植するETをする時期には子宮内膜はまだ充分に着床準備状態が整っていません。それに比較し、5日目のBTの時期には内膜の着床環境が整い胚盤胞を受け入れやすい環境にあるためETに比べBTは高い着床率(妊娠率)が得られます。
- 胚盤胞移植の条件
既に述べたようにBTの方がETに比べ高い着床率をあげている事は明らかですが、では全ての移植でBTが可能かというとそうではありません。
なぜならば3日目の胚の質が良好なものでないと培養を5日目まで継続しても胚盤胞まで到達しないからです。つまり3日目で胚のレベルがよくないと胚が途中で分割がストップし(arrest)胚盤胞まで到達しないのでBTができないというリスクもあります。
以上の事からBTを試みるには3日目に良好な胚が複数得られることが必要です。
2008年の当クリニックでの結果は3日目良好胚の胚盤胞到達率は65.5%です。そのうちの43.1%は質の良い良好胚盤胞でした。
- どんな人に胚盤胞移植を行うか?
ETに比べBTは高い着床率をあげますが全ての例でBTを行えるわけではありません。
通常BTを行う対象(適応)は
- 以前に良好胚移植(ET)を行っているにもかかわらず着床しなかった例(反復ART不成功例)
- 通常BTは1個しか移植しないため妊娠率を低下させずに多胎妊娠を予防できる
- 胚盤移植の問題点
採卵の前の排卵刺激で卵巣の反応が不良のため採卵数が少ない例では、胚が胚盤胞に到達しないこともあり移植がキャンセルされることもあり得る。
- 2008年の当院における胚移植の成績
| 妊娠周期 |
13周期 |
|
胚盤胞移植周期 (新鮮および凍結胚盤胞) |
29周期 |
妊娠率 44.8% |
